現役時代私が最も嫌いだっだ作業をご紹介させていただきます。
それは【シートカバーの取付】作業です。
一口に【シートカバー】といってもネットで検索すれば布製の簡素なものに始まりレザー調・本革製の高額商品までピンキリですが、厄介なのは車種専用に設計された高価なシートカバーでした。今でも【クラッツィオ】(高級シートカバーのブランド)という名前を見かけるたびに背筋が寒くなります。
さて、【シートカバーの取付】のどこが地獄かと言えば必ず指を痛めるからです。もちろん整備の仕事ではもっと危険を伴う作業は存在しますが、痛める確率で言えば【シートカバーの取付】はほぼ100%で予防や対策のしようがありませんでした。
なぜ指を痛めるかというと車のシートに対しカバーがジャストフィットで作られている分取付が大変だからです。
シートカバーの大半はヘッドレスト・背もたれ部・座面の3部位に分かれており、それぞれに対し取付作業を行う事になります。大体の部分はかぶせて徐々にずらしながらちょうど良い位置にカバーを動かして行くのですがまずそれが大変です。力ずくでシートを引っぱってしまうと縫合部分などが切れてしまう恐れが有りますので作業中はシートとカバーの隙間に手を入れシートを押さえながら少しづつ慎重にカバーをずらします。その際、スペースの無い中で力が入るのは主に指先が中心で、それを繰り返すうちに使っている指の爪の付け根あたりが割れてきます。また、ちょうど良いところまでずらしてこれた後は仕上げの微調整の為カバーの裾や角を強く引っ張って最終調整をしますが、この時も強く握った指先に大きな負担がかかってしまい、指の割れた部分に痛みが走ります。
ミニバンの場合ですとこの作業を前席・2列目・3列目と座席の数分行う事になりますので終わった時には指はかなりダメージを負ってしまっており、手を洗う際「うっ」となってしまうのが基本です。なお作業した日の夜、居酒屋でからあげにレモンを絞った時は悶絶級のしみ具合で涙目になりました。
私はこれを防ぐべく、【シートカバー取付】作業を行うたびに
- 指サックの装着
- あらかじめ絆創膏で指に巻いておく
- スポーツ用のテーピングを指に巻く
といった対策をしてみましたがどれも作業中に外れてしまう上、テープの粘着成分がカバーに付着してしまう等の問題が生じ断念せざるを得ませんでした。
そんな辛い作業を何度も行った末、業界に入って10年ほど経過したころからはお客様から【シートカバーの取付】についてご相談をいただいた際、作業料を高めに設定し、諦めて自分で作業してもらう方向に話を進めるようになっていました。(高い作業料でも依頼をいただいたことも有りましたが・・・泣)
記事を読んでいただいた皆様、【シートカバーの取付】は簡単ではありません。「車を買うからサービスしてくれないか」と思うかもしれませんが正直そんな楽な作業では無いのです。自分で行うとしても慣れていないとかなり時間が掛かるうえ、作業途中での破損の可能性はもちろん確実に指を痛める結果がついてきますのでしっかり料金を払って依頼しましょう。


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