査定車両:トヨタ パッソ
2014年冬
インターネットの一括査定サイトから申し込みの依頼主と18時過ぎに待ち合わせ。
ご自宅周辺の道路が狭く入り組んでいるとのことで周辺のスーパーの駐車場一角を拝借。
この時間と場所の組み合わせが悪夢の始まりだった。
依頼主宅へ出張査定の場合、最初の挨拶やヒアリング以外の時間は基本的に自宅内で待ってもらうことになるが待機場所が無い場合は依頼主もしくは私の社用車の中で待機してもらうことになる。今回は依頼主の自分の車で待っているとの申し出を受け後部座席に座っていただいたのだが、依頼主が見ているところで査定に時間をかけるのは非常に心苦しいことである。
運転席に座りエンジンをかける。
車検証情報を確認し室内の装備の確認を行うなか、フロントガラス越しに見える猛吹雪。風が強い日だったが現場到着までそれほど雪は降っておらず油断していたが東北の冬はやはり甘くない。室内での査定を済ませたので外に出なくてはならないが出たくない。雪は横から物凄い勢いで吹雪いてくる。
依頼主「いやあ、吹雪いてきましたね~、ここ風をさえぎる物無いからひどいんですよ~」
依頼主の言葉にとっさに反応してしまった。
私「いえいえ、慣れてるんで大丈夫ですよ。」
本当はぜんぜん大丈夫じゃない。むしろ当時は寒いのが大嫌いだった。(今は夏の猛暑のほうが無理)
しかし依頼主を長く待たせるのは印象に影響してしまう。腹をくくって会社支給のフード付きのコートのみで外に飛び出すも案の定被ったフードは強風ですぐに後ろへあおられ頭部がノーガードとなる。すぐさま細かく堅い雪の塊が無数に打ち付ける。
「イデデデ」
正面で吹雪を受けるのを嫌い横を向くと耳にバチバチと音が聞こえる。なんなら耳の穴にもボスッと雪が刺さりすぐに体温で溶ける水分がまた気持ち悪い。必死にこらえ外装のチェックを行う。車両後部から車体下部をのぞき込むと車体下部の隙間を潜り抜けた雪の粒が無防備な眼球を襲う。
「アイッッテ!!」
わずかな時間視力を失いその場で動けなくなる。
やがて持ち直して査定を再開。外気に触れている皮膚はとっくに感覚を失っていたがどうにか査定を終了。正直見えなかったところも多かったが高年式で走行距離が少なかったことを鑑み、車両には問題無いだろうと賭けに出る。
依頼主に査定が終わりこれから金額の計算に入ることを説明すると
依頼主「いや、金額は明日で良いから早く帰ったほういいですよ」
どうやら雪まみれの私の見て心配してしまったらしい。暗くてもだいたいの様子はわかったようだった。
お言葉に甘え買取条件は明日お伝えすることにした後に社用車へ。
ルームミラーにうつる私の髪の毛にへばりつく氷、それが溶けて滴る汁&鼻水、フードにたまった雪を見て得も言われぬ気持になりつつ車内に常備していたティッシュでそれらの水分をふき取る。車内が一時ボロボロのティッシュだらけに。
その後駐車場を拝借したお礼としてスーパーで温かい飲み物と小さなタオルを購入。
再び社用車に戻りティッシュを袋に集めつつ会社へ連絡し状況を説明。
「直帰せよ」
の言葉をいただき帰宅することになりました。
大自然の驚異を体感しほうほうのていで帰宅した私だったが運よく風邪は引かず、後日車両の買取も決まった。
よってめでたし。とはならない続きがあるので後日談に続く。
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